na0snowの備忘録

日々の読書の備忘録。

『南洲翁遺訓』 西郷隆盛 訳・解説:猪飼隆明

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戊辰戦争奥羽越列藩同盟に参加し、新政府軍に敗北した、庄内藩。西郷はその庄内藩に寛大な処置を施すよう指示した。

明治に入り、西郷の寛大な処置に感謝した庄内の人達は、西郷に逢いに鹿児島に赴く。

その時に西郷が語った言葉の数々を複数の人がまとめたのが本書、南洲翁遺訓。

 

西郷自身の言葉であるため、西郷の考え、行動理念がダイレクトに伝わってくる。

この人はどれだけ先が見えていたのか、特に驚愕したのが明治から始まった外国の模倣に警鐘を鳴らす第8訓。

 

「猥りに彼れに倣ひば、〜終に彼の政を受くるに至らんとす。」

つまり「猥らに何もかも外国の真似ばかりをしていては、最後には外国の支配を受けるようになる」ということ。

 

明治から昭和まで、西洋の真似をし続け、戦争を起こし敗北。米軍基地などアメリカのご機嫌取りをし続けなければならない、今の日本の状態を予知するかのような訓だと思った。

 

明治6年の政変がなく、西郷が明治政府に居続ければこんなことにはならなかったのかな、と思ったり。

 

 

あと、個人的に好きだなと思ったのは13訓、有名な25訓、29訓。

 

13訓「租税を薄くして民を裕にするは、即ち国力を養成する也。故に〜上を損じて下を虐げぬもの也。」

つまり、

「税を軽くして民を豊かにすれば、国力は強くなる。だから〜上が損してでも下を虐げてはならない。」

本来は税について説いたこの訓だが、これは会社にもいえることだと思う。

給料を良くして、下の子たちが余裕を持てれば、仕事に集中してレベルもあがる。ということ。

 

25訓「人を相手にせず、天を相手にせよ。天を相手にして、己を尽くし人を咎めず、我が誠の足らざるを尋ぬ可し。」

つまり

「ちっぽけな人間社会に囚われず、天を相手にしなさい。天道を全うするため全身全霊を捧げ、人を咎めたりせず、自分の信じる心、努力が足りないことを認識しなさい。」

 

29訓「人は道を行うものゆゑ、道を踏むには上手下手も無く、出来ざる人も無し。故に只管ら道を行ひ道を楽み、若し艱難に逢ふて之れを凌がんとならば、弥弥道を行ひ道を楽む可し。」

つまり

「人が実践しているのは、物や事ではなく、その道(目的)だから、そこに上手い下手はなく、出来ない人もいない。だからただひたすらに目的に向かって努力し、努力を楽しみ、もし困難や苦しいことに遭っても、ますますその努力を実践し楽しむという心を持つといい。」

 

 

明治維新の立役者、維新三傑の1人でありながら、西南戦争で朝敵として死んだ西郷隆盛

その行動の源には、ひたすらに自分の成すべき天道を信じ、その困難さえも楽しむ心があったように思う。

その分、明治になってからの政府への失望は大きかったんじゃないかと感じる。

 

 

なにせ古い内容の本なので、100%理解出来たとは言いがたい。

何度も繰り返し読んでしっかり理解したい。