『茶の本』著:岡倉天心、訳:大久保喬樹
日本の文化として、いまや海外から体験する観光客がいる茶道。その茶道を歴史や茶人、花などあらゆる面から解説した本書。
もともとニューヨークで英語で刊行された本書は、海外の人に当時、名も知られていない小国だった日本を知ってもらうのに多大な貢献をしたであろう。
お茶の文化は中国が発祥で、宋の時代にお茶の形式、手順が出来るなど、文化としての萌芽を見せはじめていた。しかし、モンゴル遊牧民の侵略により元へと変わり、お茶の文化も廃れていった。
海を越えた日本では奈良時代にお茶が伝わり、鎌倉、室町時代に形式、手順が出来あがる。
そして安土桃山時代、秀吉のお抱えの茶人だった千利休により、ついに「茶の湯」が大成される。
茶の湯は禅と深い関わりがあることはよく知られているが、その禅が宋時代に広まっていた道教にルーツをもつことは初めて知った。
そのため、「虚」の教え
(全ての本質的なものは虚のなかにこそある)
は脈々と受け継がれており、
その「虚」の教えから、完成されていないものが完成されているものよりも尊いという、日本の「侘び」文化が誕生した、と思う。
「侘び寂び」を理解するために読んだ本書だったが、どうやら道教に関しても学ぶ必要がありそうだ。
日本、東洋の芸術を愛し、その発展に人生を捧げた岡倉天心。
近代化を目指す明治日本の中で、自然を重んじる天心の考えは、間違いなく異端だっただろう。
グローバル社会の中で生き残るには、西洋の真似ばかりをするのではなく、天心の愛した東洋思想的な考え方が大切になってくる。
日本の良さは何か?日本はどんな国なのか?西洋の仕組みが本当に合っているのか?
いま一度、問うべき時がきた。