『知っておきたい「食」の日本史』 著:宮崎正勝
覚えるための歴史ではなく、ヘェーと「感じる」歴史をモットーに、食を中心にして日本の歴史を読み解いていく本書。
縄文時代から現代まで、思わず誰かに話したくなる食の雑学を交えながら、変化してきた日本の食を簡潔に記してある。
豊富で恵まれた自然環境ゆえに、日本では古代文明が興らず、1万年も狩猟・採集を軸とする縄文時代が続いたこと。
仏教の伝来が日本の肉食文化を後退させ、代わりに醤油や味噌、納豆などの豆文化を前進させたこと。
など、ヘェーと驚き、納得する食についての歴史が学べる。
特にこの本で学んだのは日本の食のブレイクスルーは2回あって、
1つは室町時代、
もう1つは江戸時代
だということ。
室町時代は
室町幕府が武家政権でありながらも京都に幕府を置いたことにより、質素倹約の武家文化と豪華絢爛の貴族文化との融合が起きた。
食の面でも遣唐使以来隔たれていった貴族と庶民の食が統合されていった。
他にも
多くの禅僧が中国へ留学し、帰国。中国の文化を持ち帰ってきたこと。
蝦夷地(北海道)との交流が盛んになり、昆布が出回るようになったこと。
などの要因により、食の大幅な変化が訪れた。
江戸時代は
海運が発達し、これまで小文化圏に分かれていた日本がひとつにまとまってきたこと。
ヨーロッパとの交流が始まり、これまでと全く違う文化が入っていたこと。
特に砂糖の「甘さ」が伝えられたこと。
などが要因となった。
室町時代も江戸時代も幕末を除けば、歴史好きたちの間でも人気の少ない時代だと思う。
それは「地味」だから。
でもその「地味」は「安定・平和」でもあり、その「平和」が庶民たちの余裕を生み、食の進化へと繋がったんだと思う。
そしてもう1つの要は、異文化交流。
貴族と庶民、日本と中国、日本とヨーロッパ、日本の地域間の交流。
こうした今まで知らなかった文化との触れ合いが新しい料理を生み出していった。
これは人間も同じだと思う。
進化、変化をしようと思ったら今までと同じことをしていては駄目で、
知らない人と交流してみたり、初めての体験をしてみたり、行ったことないところに行ってみたり、
とにかく自分の殻、世界を広げていくことが大切なんだと改めてこの本を読んで学んだ。
そしてこの本で
現代はグローバリゼーションと輸送革命により、地球規模のコールドチェーン化、「飽食」の時代へと突入したと記される。
僕は今の「食」はあまりに「モノ」化しすぎているように感じる。
元々「食」とは「命」であり、人々の生活に深く関わる「息づかい」のようなものだと思う。
食材の数だけ作る人がいて、
関わる人はもっと居て、
その人達の生活がある。
その人達の「息づかい」や「温もり」を感じる、そんな料理を作りたい。