『スターバックス再生物語 Onward』著:ハワード・シュルツ、ジョアンヌ・ゴードン、訳:月沢李歌子
今や世界中で知らない人のいないスターバックス。
1971年に小さなコーヒーショップとして始まったスターバックスは成長を続けてきた。
しかし、2007年末、成長が止まるどころか下降し始めた。
存亡の危機にまで瀕したスターバックスがどうやって持ち直したのか、2007年から2009年までの約2年の軌跡。
「スターバックスは人々にサービスを提供するコーヒービジネスではない。コーヒーを提供するピープルビジネスなのだ。」
本書内のこの言葉が特に印象に残った。
この本の著者、ハワード・シュルツはスターバックスが1号店を開いて1年後の1971年、当時はコーヒー豆の販売のみを行なっていたスターバックスで働き始めた。
その時に視察で訪れたイタリアで彼は小さなバールへと行く。
店内に広がるコーヒー豆の香り。
バリスタが流れるような作業で、情熱を持って注ぐ1杯のエスプレッソ。
バールでくつろぐお客さんたち。
それらの光景を目にして、体験して、
「ここはただコーヒーを飲んで一休みする場所ではない。劇場だ。ここにいること自体が素晴らしい体験なのだ」と感動した。
帰国後、彼はそのバールのような体験をスターバックスでもやりたいと申し出た。
しかし、当時の上司たちには認めてもらえず、彼はスターバックスを離れ、自分の会社を設立する。
そして1987年、彼の会社はスターバックスを購入する。名前をスターバックスに統一し、1杯のコーヒーでお客様同士やパートナー(従業員)をつなげ、その場の交流を楽しむ「スターバックス体験」を提供し成長していく。
そのままスターバックスはアメリカ全土、さらには世界へと進出し、グローバル企業へと成長を続ける。
2000年、ハワード・シュルツはCEOを引退、会長となり、第一線からは身を退く。
その後も新規店舗を開くことで利益を増やしていったスターバックスだったが、2007年、のちにリーマンショックと呼ばれる景気後退の煽りを受け成長はストップ。さらには下降を始める。
原因は来店数の減少と客単価の減少。
そして顧客満足度も低下していた。
新規店舗を開くことで利益を上げていたスターバックスだったが、その新規店舗拡大にパートナーの育成、物流網の構築が追いついていなかった。
そのため、商品がなかったり、コーヒーの質が落ちていたりしていた。
ハワード・シュルツはこの事態を
「スターバックスは道を見失ってしまった」
と重く受け止め、自身がイタリアのバールで体験した感動体験、スターバックス体験を復活させるべく、2008年にCEOへと復帰する。
・バリスタの育成のためにアメリカ全土の店舗を1日閉めての研修
・既存店で利益の見込めない店舗の閉鎖
・パートナーの解雇
・物流網の構築
・質の高い新商品の開発
・コーヒー豆の香りを復活させるべく、新しい半自動のコーヒーマシーンの開発、導入
・お客様との双方向で対話が出来るSNSツールの作成
など、様々な改革をして、ついに2009年に業績は好転した。
不況のなか、安易に安売りするのではなく、自らの核となる、スターバックス体験、1杯のコーヒーがもたらす人と人との繋がりを大切にして、そのための改革を惜しむことなく実行する。
手を泥だらけにして1つ1つ地道に、スターバックスは大丈夫だと信じて突き進むその姿にはとても感動した。
改革に必要なのは
・自ら会社を愛し、必ず大丈夫だと思う気持ち
・自分たちの「核」を大切にし信じる気持ち
だと学べた。
僕自身はあまり行かないが、妻はフラペチーノの新作が出るとスターバックスへと行く。
ハワード・シュルツが求めるスターバックス体験のあるコーヒーショップは日本でいうところの喫茶店に近いと思う。
それに比べると今の日本でのスターバックスの立ち位置というのは彼の求める理想とは少し違うのかもしれない。
でも日本全国、今や殆どの県にあり愛されているスターバックスのブランドはとてつもなく凄いと思う。
今まで飲んだことなかったし、飲むつもりもなかったけれど、スターバックスのコーヒーを1回飲んでみよう、そう思った。