『明治維新で変わらなかった日本の核心』 著:猪瀬直樹、磯田道史
図書館本。
タイトルから明治維新前後のことについて主に書かれているのかと思っていた。
その予想を良い意味で裏切り、日本の歴史の流れを様々な視点から解説する本書。
作家から東京都知事になり政治を熟知している猪瀬さんと、日本の歴史を深く知る歴史家の磯田さんの対談。
この二人だからこそ、特に日本史の政治面、経済面の決して教科書では教えない、深い内容を語っている。
学んだのは
・鎌倉から戦国時代にかけて、日本が「宗教卓越国家」から「経済卓越国家」へと変貌したこと。
・江戸時代、将軍・大名の力と農民の権利、経済力が上昇し、その中間の武士の権限や経済力が弱まり、武士がサラリーマン化したこと。
そしてそれが現代の企業にも年功序列や副業禁止、会社への忠誠心などの面で色濃く残っていること。
・戦国時代から江戸時代初期、1500〜1700年の間に日本は経済成長を果たし、中国からの脱却に成功したこと。
・戦国時代は武力闘争と同時に政策競争でもあったこと。
特に最初の「宗教卓越国家」から「経済卓越国家」へで気づいたのは、歴史上の建築物を見れば経済力のある場所がよく分かる。
古墳時代にはその地域の王の力を示す古墳が造られた。
奈良時代に建てられた神社(東大寺)は凄く大きくて技術も凄い。その頃は今の奈良公園はお坊さんたちが住む巨大な屋敷があったらしい。
戦国時代には各地に城が造られるが、その時代に建てられた寺は少ない。
という風に建築物が古墳→寺→城へと変化している。
つまり昔は力を持っていた王が居て、中国から仏教が入ってきて寺などの宗教団体が経済力を持つようになり、それが戦国時代には崩れて各地の大名へと経済力が移行したということ。
歴史とは人の選択の積み重ねで、過去の選択があったからこそ今の現状がある。
それは〜時代、〜時代と分断されるべきものではないし、起こった事柄だけを覚えるものでもない。
その事柄の背景にあるものを掴まないと本当の意味で歴史を学んだとはいえないのではないか。
本当の意味で歴史を学ぶためには、学校の穴埋め式のペーパーテストではなくて、
例えば自分で「歴史上の出来事」を一つ決め、その出来事の
・起こった理由、・動かした人々、・実際の出来事の流れ、・それによって変化したもの
を調べる。
そんな勉強こそが大切なのかも知れない。